研究概要 |
本研究の目標は、光と物質との間の相互作用を高度制御する非線形フォトニック結晶を用いることによって、新たなアプローチからこれまで存在しなかった深紫外小型高性能コヒーレント光源を実現することである。実施2年目である平成20年度は、初年度(平成19年度)において高精度作製に成功した高非線形性ニオブ酸リチウム(LiNbO_3)単結晶2次元フォトニック結晶素子を用いて、フォトニック結晶内における非線形(波長変換)特性と特異な光分散関係(低群速度等)との相互関係を独自に開発した光バンド構造の直接観測手法から定量的に検証し、どのような光分散制御が従来性能限界を打破する新しい光非線形機能を発現させ高性能化につながるのか解明することによって、極めて遅い群速度と新しいタイプの位相整合を併せて達成した波長変換効率の紫外領域における300倍以上の増強効果を世界に先駆け実験的に実証することに成功した。この新たな高効率波長変換技術の開発によって、相互作用が弱く高効率な動作が従来困難であった波長領域 (深紫外・テラヘルツ波など) でも実用レベルの波長変換が可能となり、半導体LDでは実現できていない小型高性能な未踏波長コヒーレント光源開発実現の可能性が開かれた。またさらに非線形光学ポリマーを用いて非線形2次元フォトニック結晶導波路素子を作製し、同様の原理により、3次非線形光学応答 (2光子吸収過程) 性能の大幅な高効率化に初めて成功した。性能指数である2光子吸収断面積σ^<(2)>の値として90000GMという極めて高い値(世界トップデータ)を記録した。本成果により、次々世代超高密度3次元光メモリなど、これまで材料性能が低く実用化できていなかった様々な応用デバイスの実現が期待される。 本研究成果の一部は、2008年12月に開催された国際会議(2008IC NME)において発表しICNME2008 Outstanding Poster Presentation Awardを受賞した。さらに、3次非線形応答機能の大幅な高性能化の内容を報告した論文(Appl. Phys. Lett. 93, 111110 (2008))は、Nature誌の刊行で知られるNature Publishing Group(NPG)のNPG Asia Materials (2008年11月25日版)において、研究ハイライト(Research Highlights)として選出され、アジア環太平洋地域における材料科学分野の最高レベルの研究成果として高い評価を受けた。
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