研究概要 |
1.パターニング法の確立 分子膜のパターニング法として,固体表面にマスクパターンを介して紫外線(UV)照射したのちに,分子膜を塗布する(固体表面へのUV照射)方法を新たに提案するとともに,その有効性をシリコン表面と磁気ディスク表面において確認した.従来の分子膜へのUV照射法(固体表面に分子膜を塗布したのちに,マスクパターンを介してUV照射する方法)とは異なり,固体表面へのUV照射法は,UV吸収率が低い潤滑剤PFPE ZO3にも適用可能で,潤滑剤の特性に依存しない高い汎用性を有することを明らかにした. 2.パターニングのメカニズムの解明 UV照射の効果を固体表面と潤滑剤分子末端基の極性相互作用を増強させることによりモデル化するとともに,厚さ2nmの極性高分子液体潤滑膜の分布を分子動力学法を用いて再現した.その結果,局所的なUV照射により,潤滑剤分子が非照射領域から照射領域へ移動し,平衡状態では潤滑膜の凹凸パターンが形成されることを確認した.またエネルギーの計算により,UV照射直後に急激に上昇した潤滑膜の内部エネルギーが,非照射領域から照射領域への分子移動に伴い,安定な状態へ遷移することを明らかにした. 3.力学特性の測定 走査型プローブ顕微鏡を用いて凝着力を測定した.プローブとしては,先端曲率半径10,100nmの市販プローブ,先端曲率半径を10nmから100nmに磨耗させた自作プローブ,およびチップレスプローブに半径15μmのガラス球を接着した自作プローブの4種類を比較検討し,高精度・高再現性のデータ採取が可能な先端曲率半径100nmの自作プローブを選定した.厚さ2nmの分子膜を塗布したディスク表面にUV照射ありと照射なしの場合を比較評価した結果,凝着力の測定値が理論値と精度よく一致すること,またUV照射により凝着力が約10%低減したことを明らかにした.
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