研究課題
二酸化チタンにコバルトをドープすると室温を超えるキュリー温度を有する強磁性半導体になる。ホスト半導体である二酸化チタンがワイドギャップを持つため、その強磁性が光伝導に及ぼす影響を調べることで、強磁性のメカニズムの解明や、さらには強磁性の制御を可能にすることが期待できる。本年度は10^<19>cm^<-3>程度の低キャリア濃度で強磁性が発現するアナターゼ型薄膜の光伝導測定に取り組んだ。バンドギャップより高いエネルギーの紫外レーザー照射下で光伝導を調べたところ、光伝導の緩和が非常に長く、定常状態での磁気伝導の測定が室温では困難であった。そこで、導電性ポリマーをショットキー電極として用いて薄膜表面にショットキー障壁を形成したところ、緩和の長い成分が大幅に減少し、室温においても光照射下での磁気伝導の安定な測定が可能になった。しかし、光照射下での電子濃度の増加は10^<18>cm^<-3>もしくはそれ以下で、光照射による顕著な磁性の変化は見られなかった。なお、照射光の波長依存性についてはバンド内遷移とバンド間遷移で大きな差は見られなかった。一方で、電気二重層トランジスタ構造による一桁大きい電子濃度のドーピングにより、異常ホール効果が増加した。これは、この物質の高温強磁性が電子キャリアを媒介している初めて得られた直接的な証拠である。一方で、X線磁気円二色性やX線光電子分光による電子状態の解明にも取り組み、表面空乏層の存在から薄膜の表面付近では電子濃度が低く強磁性が抑制されることがわかった。この物質の表面・界面での強磁性が半導体の性質に影響されることが明らかになった。
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Appl. Phys. Lett. 94
ページ: 102515-1-3
Appl. Phys. Express 1
ページ: 111302-1-3