量子井戸でのキャリア捕獲、脱出時間によるレーザの利得飽和を考慮したレート方程式にベース層でのキャリアの挙動を表現する電流連続の式を適用し、その小信号応答を求めた。光強度変調特性はエミッタ接地ではレーザダイオードと同様の動作を示した一方、ベース接地動作において緩和振動抑制効果を見出した。この効果によりレーザダイオードにおいて最大変調帯域が24GHzであったのに対し、同じ光出力の時、ベース接地では40GHzとなり、レーザダイオードを超える高速変調実現への可能性を示した。 作製プロセスに関しては、レーザトランジスタの電流狭窄構造として導入予定の埋め込みヘテロ構造の特性向上を目的に、GaInAsP量子井戸を活性層とする埋め込みヘテロレーザダイオードの作製を行った。活性層ストライプ両脇の埋め込み再成長時に最初に成長するn-InP層を250nmから100nmと薄くすることでストライプ両脇をパスとするリーク電流の低減を実現し、共振器長L=1250μmにおいて外部微分量子効率η_<d>を48%から58%へ、共振器長依存性から求めた注入効率η_<i>を51%から76%へと改善した。また、L=500μmにおいてη_<d>=67%を実現し、高い光出力特性を得る事に成功した。次に、高い利得が得られるAIGaInAs量子井戸活性層導入に向け、Asを含むGaInAsやAIGalnAsといった材料を高レートでエッチング可能なICP-RIEによるメサストライプ形成を行い、良好なエッチング形状を得た。 以上より、小信号解析によりレーザトランジスタの動作機構を明らかにし、ベース接地動作時の緩和振動抑制効果による高速変調の可能性を示すとともに、長波長帯レーザトランジスタの構造形成に関する知見を得た。
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