1. 局所的観測からの電磁波源定位の基礎原理として、複素勾配に基づくヘルムホルツ方程式のソース項推定手法を開発した。空間中の一点において、狭帯域の波動場複素勾配を観測量とすると、複数波動源の個数、位置、強度を未知数とするモーメント問題に帰着される。これにより、従来のMUSIC法のように、電磁波源が存在しうる領域に対し評価関数をくまなく計算することなく、観測量から直接、電磁波源パラメタが求められる。次に、複素勾配の精度良い観測手法のために、観測中心を原点とし、波長より短い半径の円周上における電磁場を観測することを考え、そのフーリエ係数が高次微小量を除き複素勾配に一致することを示した。これにより、サーキュラーセンサアレイを用い、出力荷重和をとるだけで、複素勾配が観測できることになる。数値シミュレーションより、円周上の8センサ、ノイズ1%で、単一の電波源が3度程度の推定誤差で定位できること、および電波源個数が1個であるか2個であるかが判定できることを示した。303MHzのRFIDタグの定位実験を行い、1m程度のレンジで、10度程度の推定誤差で定位できることを示した。 2. 一方、135KHZのRFIDタグ定位に関して、平面型のグラディオメータおよびループコイルからなるセンサユニットによる定位実験を行った。ただし、勾配を差分近似によって計測する近似誤差が推定精度に影響を与え、特にタグがセンサに接近するとこの影響が顕著となる。打開策として低周波磁場の場合でも、フーリエ係数を計測することで定位可能であることを示した。 3. さらに、局所勾配・フーリエ係数の観測に基づくソース定位手法は、脳内電磁場源定位や、局所対称性に基づく画像特徴量抽出といった新たな応用へ展開可能なことを示した。
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