研究概要 |
本年度において得られた成果は以下に列挙される. 1.既設構造物を対象として,解析を用いた耐久性能予測を行う場合,実際に打ち込まれたコンクリートの配合条件を知ることが重要となる.本研究では,コンクリートおよび骨材の酸化カルシウム含有量を測定する化学分析と水和の進行による生じた空隙および水和収縮による生じた空隙などの物理的な空間構造分析の組み合わせにより,既存の手法における適用対象材料の制限や煩雑さなどの問題点を改善し,なおかつ,高い推定精度を実現する配合推定方法の開発を行った.提案手法の適用性を実験室レベルで作製した既知の供試体の配合分析により検証するとともに,実構造物の配合推定にも有効であることを確認した. 2.数値解析手法を用いて耐久性予測を行う揚合,コンクリートの配合や養生・環境条件を適切に入力する必要がある.ただし既設構造物を対象とした場合,これらの情報を建設当初にまで遡って特定することが一般に困難である.本研究では,硬化コンクリートの品質を示す指標として透気特性に着目し,数値解析への入力情報として利用することを試みた.その結果,制御された実験室環境ではあるものの,配合条件や養生条件を入力せずとも,透気係数から推定されるセメント硬化体の空隙構造ならびに水酸化カルシウム量を入力することで,中性化進行を良好な精度で追跡可能であることを示した. 3.熱力学連成解析システムにおける鋼材腐食モデルの高度化を図った.実構造物の耐久性予測を行ううえで,様々な温度条件下,あるいは塩化物イオン含有量に対して鋼材腐食速度を定量化することが重要になるが,本研究では低濃度〜高濃度の塩化物イオンを含む供試体を作製し,20, 40, 60℃の温度環境における鋼材腐食量を高精度に測定することに成功した.この実験結果に基づき,電気化学理論に基づく既存モデルを微修正し,構成モデルの高度化に成功した.
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