研究概要 |
本研究では,人間が振動を受けた際の身体の動的応答を用いて,振動による不快感に代表される心理的応答の定量的評価・予測法を構築することを最終的な目標としている.ここで,低周波数領域では,身体全体が運動するグローバルな応答を感受することにより,それより高い周波数領域では,局部的な運動が卓越するローカルな応答を感受することにより,それぞれ不快感などの心理的応答が発現するものと推測できる.研究代表者らの既往の研究で,グローバルな応答と心理的応答との関係については,鉛直入力振動を用いた実験によりある程度解明できている.そこで,本年度の研究では,鉛直振動暴露時の身体のローカルな振動応答と心理的応答との関係を実験により明らかにすることを目的とした.年度の前半は実験施設の整備を行い,後半から実験を実施している.まず,被験者1名を用いた予備実験を実施し,鉛直振動を座位あるいは立位の被験者に与えた際の身体主要部位における振動応答と心理的応答の測定結果の比較から,実験で用いた5〜25Hzの振動数範囲において,心理的応答の発現に関連が深い身体部位の応答は,振動数によって異なることを明らかにした.この結果に基づき,被験者12名を用いた本実験を実施し,上述の振動数範囲における定常的な正弦振動に対して測定した身体各部位における振動加速度とその際の振動不快感の関係を検討した.その結果,振動数により対象とする身体部位を変えることにより,動的応答から振動不快感を推定できる可能性を示した.研究成果は次年度以降に学会,および論文の形で公表する予定である.
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