研究概要 |
いわゆる非構造壁は, 一般に建物の耐震性能に寄与しない存在として扱われる. しかし, 過去の地震被害や実験研究は, 非構造壁が少なからず建物の性能に影響することを示してきた. そこで, 本研究では, 非構造壁による建物の耐震性能の向上効果に着目し, その真の性能を建物の付加的な性能として積極的に利用する新しい技術の開発を試みる. 具体的には, インターロッキングブロックにより面外への転倒防止機構を確保した組積造ブロック壁を対象に, 本構造を水平力抵抗性能, 鉛直力抵抗性能, あるいはその中間の性能を有する耐震デバイスとして選択的に利用する方法を構築する. 昨年度までの検討より, セメント系ブロックから成るブロック壁をRC架構に充填すると, 主架構の変形性能が大きく低下することを示した. この効果はブロック素材の力学特性に影響を受ける可能性があるため, 昨年度のブロック素材の選定試験に追加し木質材料の材料特性を取得した. 木質材料が比較的低剛性であり, ブロック素材として軽量, 加工性などの優位点を有することに着眼し, 平成20年度は, 木質材料を利用したインターロッキングブロックを製作し, 本ブロックより構成される面外への転倒防止機構を有するブロック壁を開発した. 本ブロック壁をRC門型架構に設置した場合の効果検証を目的に, 静的な破壊実験を計画, 実施した. その結果, (1)木質ブロックの利用により主架構の損傷が抑制され, 主架構の変形性能を維持してブロック壁を導入できること, (2)ブロック壁の損傷は大変形域まで小さく, 主架構の破壊後も架構全体として鉛直力抵抗性能を維持すること.などを確認し, 本研究が提案する付加的な耐震性能を選択可能なブロック壁はブロック素材の制御により実現し得ることを実証した.
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