本年度は前年度の実験では明らかにできなかったパラメータに着目し、床スラブを有する鋼部材の繰り返し載荷実験を行った。試験体は前年度と同様の柱と梁を反曲点位置で切り出したト字形部分架構であり、実験は試験体の柱端部をピン治具で支持した状態で梁の自由端に強制変位を与えて行った。実験パラメータは、デッキプレートの設置方向、梁-パネル耐力比とし、計4体の試験を用意した。実験の結果、床スラブの損傷状況にデッキプレートの設置方向が及ぼす影響は小さく、床スラブに発生した最大ひび割れ幅は梁端部の塑性形量に比例して成長することが確認できた。また、梁端部よりも柱梁接合部パネルの降伏を先行させた試験体では、床スラブに発生した最大ひび割れ幅はパネルの塑性変形が大きくなるにつれ成長することが分かった。 さらに鋼製梁とコンクリートスラブを緊結するスタッドコネクタの面内せん断拳動を把握するため、スタッドコネクタの寸法とその配置方法をパラメータとした押し抜き試験を行った。得られた実験結果を既往の数値解析モデルと比較するとともに、スタッドコネクタの面内せん断挙動が柱梁接合部パネルの弾塑性挙動に及ぼす影響を考慮できる力学モデルを構築した。この力学モテルを用いることで、数値解析において床スラブの存在による柱梁接合部パネルの見かけの剛性・耐力の上昇を再現できることがかった。 本研究課題では載荷実験を通して床スラブの損傷状況と鋼部材の塑性変形量の関係に関する基礎データを得ることができ、また床スラブの存在が剛製梁、柱梁接合部パネルの力学挙動に及ぼす影響を再現できる力学モデルを構築することができた。
|