研究概要 |
Geデバイス形成温度はせいぜい600℃前後であるが, 前年度までの研究から, この温度域でのGeO_2薄膜の熱力学的な安定性は, Ge基板とGeO_2膜の界面でGeOを形成し, これが脱離する反応が支配的であることが明らかとなってきた。本年度は, 分光エリプソメトリーを用いてGeO_2の膜質劣化を検出する手法を確立し, さらにこの劣化の形成過程に関する知見を得た。 (1)分光エリプソメトリーを用いてGe基板上のGeO_2の光学定数を測定したところ, 熱処理による膜質劣化に対応して消衰係数(k)のスペクトルが変化していることが分かった。特に, バンドギャップよりも1eV程度小さい領域での光吸収(5〜6eVのサブギャップ吸収)は欠陥準位密度と対応すると考えられるため, kのスペクトルによりGeO_2/Geスタックの劣化を高感度に検出することが可能となった。 (2)膜厚の大きく異なるGeO_2膜の示すサブギャップ吸収の比較により, 上記の方法で検出される欠陥は, 膜中に形成されるバルク欠陥に対応するものであることが分かった。また, サブギャップ吸収の熱処理時間依存性, 及び熱処理温度依存性の検討の結果, この欠陥の形成量はGeO_2/GeスタックからのGeOの脱離量と強い相関がみられることが分かった。従ってここで検出されたものはGeOの脱離に伴ってバルク中に生じる欠陥であると判断される。尚, Si基板上のGeO2膜は熱処理によるGeOの脱離が生じないことが分かっているのだが, この場合はサブギャップ吸収の変化は全く観察されないことも, 上記の結論とよく整合している。
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