研究概要 |
初晶と共晶からなるNb-TiNi合金を鍛造・圧延により薄膜化すると、水素透過を担う(Nb, Ti)相の水素透過方向の連続性が低下するため、水素透過度が著しく減少する。従って、低下した水素透過度を回復させるプロセスの確立が工業的に重要になる。断面減少率99%以上に加工したNb40Ti30Ni30合金を様々な条件で熱処理したところ、熱処理の温度・時間とともに、加工により形成した異方性組織が崩れ、(Nb, Ti)相の水素透過方向の連続性が回復し、それに付随して水素透過度が加工前と同等の値まで回復することが分かった。その結果、水素透過度の犠牲なしに膜厚を1/70程度にすることができ、水素透過流量が70倍以上向上することが分かった。 本複相型水素透過合金は、水素化挙動のことなる2相、すなわちbcc-(Nb, Ti)相とB2-TiNi相から構成されているが、それぞれの単相合金では良好な耐水素脆化性は得られない。本合金の耐水素脆化性の起源を調べるため、bcc単相合金、B2単相合金、bcc+B22相合金の高温高圧水素中での格子定数の変化を調べた。単相合金では、水素化によりbcc相は4%程度格子が膨張するが、B2相の膨張量は1%以下であった。また、水素化後も鋭い回折ピークが観察されることから、均一に膨張が生じていることが分かる。しかし、2相合金では、B2相の膨張量が低下し、かつ多量のひずみが導入されることが分かった。つまり、B2相が自らひずむことでbcc相の格子膨張の影響を緩和し、合金の耐水素脆化性向上に寄与することが分かった。
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