研究概要 |
Nb19Ti40Ni41共晶合金を熱処理すると、bcc-(Nb,Ti)相がB2-TiNi相中に析出した2相合金を形成した。この合金中のbcc相およびB2相の組成を決定し、それぞれの単相合金を作製し、高温高圧水素下でX線回折を行った。bcc単相合金を673Kで水素化すると、格子定数が約3.8%膨張した。また、温度の低下とともに増大した。これは、水素吸蔵による格子膨張が熱収縮を上回るためである。一方、B2-TiNi単相合金を同条件で水素化すると、673Kではほとんど膨張しなかったが、温度の低下とともに格子膨張が観察された。また、ブラッグピークの半価幅は水素化および温度変化によらずほぼ一定であった。bcc+B22相合金を水素化すると、bcc相はbcc単相合金と同じ水素化挙動を示した。従って、bcc相は他相による拘束の影響を受けずに水素化することがわかった。一方、2相合金中のB2相は、単相合金と比較して格子膨張量が小さく、半価幅が大きくなった。これは、bcc相による機械的な拘束を受け、水素吸蔵量が低下したと考えられる。また、bcc相の大きな膨張により、B2相に不均一ひずみが導入されたと考えられる。また、共晶合金を同条件で水素化した場合は、これらがより顕著に観察されることがわかった。Nb-TiNi 2相合金では、拘束によりTiNi相の水素吸蔵量が低下すること、TiNi相がbcc相の膨張を緩和するようにひずむことで、耐水素脆化性が発現していると考えられる。また、両相がより細かく複雑な組織を呈しているほど大きな効果が得られると考えられる。
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