従来法であるアルミナテンプレートではなく、ガラステンプレートを使ったナノワイヤー構造熱電変換素子の作製を行った。このテンプレー卜は、予め無数の空孔を持った石英ガラスを用意しておき、1700℃程度で軟化させ、空孔に圧力を加えながら徐々に引き延ばして作製しており、引き延ばしの速度によって、必要な穴径を比較的容易に決めることが出来る。現状では、石英テンプレートの最適化が完全に行われていないため、ナノ/マイクロサイズが混在するテンプレートの試作が行われたが、このテンプレートを用いてBi材料の圧入が60MPaの圧力で行われた。テンプレートの長さが6mm程度と従来よりも長いにも拘わらず、素子の作製が行われ、50〜300Kの温度範囲で抵抗測定、ゼーベック係数測定が行われた。現状では素子の断面積が完全に分かっているわけでないため、抵抗率への変換は困難であるが、従来のバルク素子と比較しても200K以下で抵抗の温度係数が小さくなることが実験的に確認された。これはBi中のキャリアがテンプレートと積極的に衝突するため、緩和時間に制限がもたれ、結果としてキャリアの移動度が小さくなっていることと予想される。ゼーベック係数については、従来のバルク素子と比較して大きいものは確認できなかったが、磁場中でのゼーベック係数の非対称性、Umkehr効果が確認でき、作製された素子が単結晶であることを示した。また、磁場中での巨大ゼーベック係数を測定し、ボルツマン方程式を用いた理論計算と比較しても大きく、ゼーベック係数上昇の新しいメカニズムの可能性を示している。
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