高純度Al_2O_3、Y_2O_3およびTZPを出発原料とし、極微量のカチオンドープおよび電場・応力場・雰囲気制御下での焼結プロセスにより、種々のナノ界面構造を有する酸化物多結晶体の作製を試みた。この目的のために、超高温酸化・不活性雰囲気炉および、応力場制御プロセスとして大気中1400℃常用の高温炉を付属させた精密万能試験機を購入し、これらを新たなプロセシング装置として導入した。また、ナノ界面物質輸送現象の評価を目的として高温塑性特性、イオン伝導性、拡散係数の評価、界面エネルギーの測定によりナノ界面物質輸送現象の実験的評価に着手した。特に界面エネルギー測定のために、試料表面処理のための環境制御、高温炉ならびに専用AFM解析アプリケーションの導入を図った。以上の実験の結果、電場・応力場印加焼結により、例えば従来難焼結性とされてきたY_2O_3において焼結温度を800℃以上低減させることに成功した。これは光学材料・耐プラズマ材料としての実用化の拡大に貢献する成果である。高分解能透過型電子顕微鏡を中心としたナノ界面における微細構造や化学組成・電子状態評価により、この低温焼成は粒界ナノ領域における物質輸送の低温化および界面エネルギーの低下に起因することを突き止めた。また、TZPにおいてナノ界面へのカチオンドープにより粒界化学結合状態を制御し、微細組織観察と第一原理分子軌道計算の結果と併せて、ナノ界面電子状態とイオン伝導性および高温粒界塑性との関連を明らかにした。これらの成果は平成20年度中に欧文学術論文誌に掲載される予定である。
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