ホウ化物は、高融点、高硬度、高電気伝導性から導電性セラミックスとして応用される他、仕事関数の低いものは熱電子放射材料に用いられている。二ホウ化マグネシウム(MgB_2)に代表される二ホウ化物は、金属の層とグラファイト状に結合したホウ素の層が交互に積み重なった結晶構造を有し、窒化ガリウム(GaN)の基板として期待される二ホウ化ジルゴニウム(ZrB_2)や特異な磁性を持つ二ホウ化クロミウム(CrB_2)など注目すべき物質が多くある。本研究では、成長雰囲気中の水分や酸素などの不純物を減らすことが可能な超高真空装置を用いて二ホウ化物の薄膜化を試み、その表面・界面構造を制御することで異種基板へのエピタキシャル成長、異種二ホウ化物の多層化を目指す。初年度は、反射高速電子線回折により薄膜成長表面のその場観察が可能な超高真空気相成長装置を新規に立ち上げた。新装置を用いて、二ホウ化物の中でもGaNやZnOの成長基板として期待されるZrB_2のSi(111)上のエピタキシャル成長実験を行った。最大10mmx20mmのSi(111)基板を900℃に保ち、原料気体であるZr(BH_4)_4蒸気の圧力と、気体を基板近傍へ供給するキャピラリーと基板の距離をパラメータとして実験を行った。その結果、ZrB_2(0001)-(1x1)〓(2x2)の温度による表面再構成構造相転移が観測できるほど平坦性に優れた膜を得ることが可能となった。
|