【背景と目的】 タングステン酸ジルコニウム(以下ZrW_2O_8)は、温度が上昇すると縮み、温度が下がると膨らむ負の熱膨張係数を有する材料であり、-273〜777℃という極めて広い温度範囲においてこの負膨張を示す。さらに-8.7x10^<-6>/℃とその絶対値が大きい(-273〜420℃の範囲)という非常に興味深い特徴を有する。本研究では、この負膨張特性を利用した熱膨張制御コンポジットコーティング材を、スプレープロセスにより開発することを目的としている。 【本年度のアプローチとその成果】 本年度は次年度の研究成果を元に、より詳細に成膜条件、粉末熱処理条件、皮膜熱処理条件と得られた皮膜組織・特性の相関について明らかにすることを目的とした。さらに、具体的なアプリケーションを想定したパフォーマンスについての評価を行った。開発したタングステン酸ジルコニウム溶射皮膜は、溶射したままでは正の熱膨張係数を有している一方で、熱処理を行うことにより負膨張化をすることが明らかとなった。さらに、その負膨張の度合いは、ジルコニアと酸化タングステンの混合比により制御できることが明らかとなった。一方で、正膨張を示した溶射まま皮膜は、一般的に溶射皮膜に認められる細かい微視き裂が認められず非常に撤密な皮膜となることが明らかとなった。この特性に注目して海水耐食試験を行ったところ、セラミックス溶射皮膜でありながら優れた耐食性を有することが明らかとなった。本成果に基づき、特許出願を行った。
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