研究概要 |
本研究は,超臨界二酸化炭素を用いた超臨界溶体急速膨張(RESS)法による医薬用有機物のナノ粒子創製技術の実用化に向けた基盤の構築を目的とするものである。超臨界二酸化炭素を用いたRESS法による医薬用有機物のナノ粒子創製技術の実用化に当たっては,「超臨界二酸化炭素に対する医薬用有機物の溶解度」及び「二酸化炭素-医薬用有機物系の気液固三相平衡関係」が必要不可欠な基礎的知見となる。そこで本年度は,超臨界二酸化炭素に対するアスピリンおよびカフェインの単一溶質系ならびに混合溶質系に対する信頼性の高い溶解度データを流通型装置により測定し,3次状態方程式とvan der Waals型混合則に基づいた高精度な相関手法を提案した。また,二酸化炭素+アスピリン,カフェイン,フェニルブタゾンおよびテオフィリン系の気液固三相平衡関係を第一融解点観察法により測定し,信頼性の高い気液固三相平衡データの蓄積を行い,3次状態方程式とvan der Waals型混合則に基づいた相関手法の提案を行った。さらに,RESS法による医薬用有機ナノ粒子の安定生成を可能とする創製手法と創製装置の開発,つまりRESS法による汎用性の高い粒子設計法の提案を目的とし,モデル物質であるRS-(±)-イブプロフェンとアセチルサリチル酸(アスピリン)の粒子創製を種々の条件下で試み,粒子創製に及ぼす操作パラメータの影響を詳細に検討した。その結果,RESS法による生成粒子の特性(粒径,形態,結晶構造,結晶性など)は「溶体生成部-粒子生成部間の過飽和度」と「粒子生成部での溶体の相状態」により制御できるという粒子設計法を提案し,RS-(±)-イブプロフェンとアスピリンについて本設計法が適用可能であることを明らかにした。
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