研究概要 |
本年度は予定していた共焦点ラマンIR顕微鏡による触媒表面観察が装置の故障により不可能になったため,計画を一部変更して,マイクロ流路幅や触媒担持法の異なる種々の壁面触媒装填型マイクロリアクターの作製とサブテーマ(2)「マイクロ空間の精緻な流れ場が有利となる反応パラメータの分類」について詳細な検討を行なった。 モデルとして原料Aから目的生成物Pが生成する反応(反応1)とPがさらに反応して副生成物Qとなる反応(反応2)による逐次平衡反応を考え,目的生成物Pの収率に対する壁面触媒装填型マイクロリアクターと触媒充填型反応器の違いや,反応速度定数,拡散係数,マイクロ流路幅の影響を検討したところ,反応1と反応2の反応速度定数の比が小さい場合は従来の触媒充填型反応器により目的生成物Pの収率の制御が可能であった。しかし,反応1と反応2の反応速度定数の比が大きくなると,充填型反応器では2段目の反応の進行を抑制できないが,マイクロリアクターにおいては接触時間を制御することで,反応1を選択的に進行させることを示した。また,マイクロ流路幅の影響を考慮した拡散速度と反応速度の比を表す無次元数φを導入し,その影響を検討したところ,φが大きい拡散律速下では平衡収率を上回る目的生成物Pの収率が得られることを明らかにした。マイクロ流路内では、触媒付近では平衡に近い状態であるが,バルク中は平衡制約を受けず,拡散速度の違いにより各成分の濃度分布が形成される。この流路内の濃度分布を適切に制御できる点がマイクロリアクターの利点であり,これを活かす装置形状設計と操作法が重要である。さらに,シミュレーションの結果を実験的に証明するため,壁面触媒装填型マイクロリアクターと触媒充填型反応器を用いて,メタノール分解反応を行ったところ,実験結果とシミュレーションは良好に一致しており,本シミュレーションの妥当性を明らかにした。
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