本年度は継続してサブテーマ(1) 「マイクロ反応器の役割の明確化とマイクロ反応器内における触媒反応機構の解明」を行った。昨年度までにラマン分光光度計を用いてマイクロ流路の触媒表面上の中間活性成分の測定するプレート型反応装置の作製に成功しており、これを用いて従来の固定層型触媒反応器とプレート型マイクロ反応器における反応挙動の差についてCO変成反応を例に検討した。その結果、プレート型マイクロ触媒反応器においては、触媒表面上の活性種が非常に均一に分散していることを明らかにした。それに対して固定層触媒反応器は、表面活性種濃度が高低差が大きく、触媒表面上のヒートスポットの存在を示した。マイクロリアクターにおいては、高い比表面積から温度が均一に保持されるため、発熱反応おいても反応が均一に進行し、高い選択率が得られると考えられる。また、プレート型マイクロ反応器では触媒と反応ガスの接触効率が低下する恐れがあるが、気相反応においてはマイクロオーダー程度の空間による拡散抵抗は無視でき、活性の低下がほとんど無いことを実験とシミュレーションの両面から明らかにした。 次にサブテーマ(3)「高い選択率を得るためのリアクターの設計」、特にプレート型マイクロ反応器の高い比表面積を有効に生かしたマイクロメンブレンリアクターの設計について検討を行った。分離膜の性能、触媒活性および反応器内の流動状態を考慮した新たな無次元数を提案し、「平衡を超えた反応率の実現」および「阻害反応の抑制」に必要な条件を満たす反応器の簡便な設計法を提案し、実験とCFDシミュレーションにより妥当性を明らかにした。その他、「流れに垂直な方向に温度勾配をつけて熱拡散を利用する反応器」、「反応器内の濃度分布を制御したリアクター」の設計について検討し、気相反応・液相反応ともにマイクロリアクターの精緻な流れを利用した高効率反応器設計法を提案した。
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