本研究は、京都大学防災研究所白浜海象観測所が所有する海洋鉄塔を風況モニタリングステーションとして開設することにより、今後日本沿岸で洋上風力発電を推進していく上で必要不可欠な風車ハブ高度(60m〜100m)の風況特性の解析及び、数値シミュレーション・人工衛星リモートセンシングによる海上風速推定の検証を行うことを目的とする。平成19年度に得られた成果を以下にまとめる。 1)白浜海洋鉄塔上に小型ドップラーソーダを設置し、海上風の鉛直プロファイル観測を開始した。海洋鉄塔から観測棟を経由して神戸大学のデータサーバに観測データを転送するシステムを構築することにより、白浜海洋鉄塔での観測データを神戸大学においてリアルタイムでモニタリングすることが可能になった。 2)気象業務支援センターから気象庁数値予報値をダウンロードし、それを入力値としてメソ気象モデルMM5を実行する「局地気象予測システム」を構築した。これにより、白浜風況モニタリングステーションにおける48時間先までの風況予測を毎日自動で行うことが可能になった。 3)3つの人工衛星ERS、ENVISAT、ALOSによって撮影された合成開口レーダー画像を処理し、モデル関数CMOD4により白浜海域の500m解像度の海上風分布図を作成した。白海洋鉄塔での観測値との比較により、合成開口レーダーの海上風推定精度はRMS誤差で2m/s程度であることが明らかになった。 4)メソ気象モデルMM5を用いて、2005年1年間の白浜海域での数値シミュレーションを行った。計算精度は従来の日本沿岸の計算精度とそれ程変わらない結果(RMS誤差で2m/s台前半)となったが、海陸風の再現性、陸面の粗度に関していくつかの問題点が示され、次年度への課題となった。
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