1) 日本沿岸の風況特性が洋上風力発電に与える影響の評価 : 白浜海洋観測鉄塔における長期間の風速データの解析より、海陸風循環に伴う日変化の特性、ワイブル分布特性、乱流強度特性、大気安定度の影響等が明らかになった。特に日本近海では黒潮に代表される暖流と冬季の寒冷な季節風などの影響により、海上風速及び風力エネルギーが極めて敏感に大気安定度に依存することが明らかになった。 2) 風速鉛直プロファイル計算の高精度化 : メソ気象モデルMM5及びWRFから得られる風速鉛直プロファイルを気象庁プロファイラによるデータと比べることにより、現在の大気境界層スキームでは実海域のプロファイルを十分に再現できないことが明らかになった。その一因として沿岸海域における計算において海面温度の与え方に大きな課題があることがわかり、その改善手法を提案した。 3) 風況予測システムの開発 : 沿岸海域での海上風予測を目的として、メソ気象モデルMM5を核とした局地気象予測システムKWFSを構築し、運用を行った。これにより、瀬戸内海海域の3日先までの海上風予測値を定常的に得ることが可能になった。風速予測精度は、初期時刻直後で平均風速の40%程度、72時間先で60%程度の誤差であった。 4) 合成開口レーダーによる海上風速推定 : 合成開口レーダーとメソ気象モデルを組み合わせることにより、高精度な洋上風力資源調査手法の確立を目指した。具体的には、メソ気象モデルにより推定される風向情報を合成開口レーダーによる風速推定アルゴリズムの入力値として用いた。この手法により年間のワイブル平均風速、ワイブルエネルギー密度を推定した結果、やや過小評価の傾向があることが明らかになった。
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