JT-60Uトカマク装置において周辺電流分布、密度分布、イオン温度分布、回転計測のためのリチウムビームプローブ・ゼーマン偏光計を開発した。空間分解能は約1cmで、プラズマ周辺部を20チャンネルの視線を見込む。引き出し電流5mA程度のリチウムビームのプラズマ入射に成功するとともに、狭帯域エタロン・干渉フィルター検出系および高効率CCD付きレンズ分光器の調整後、プラズマ計測を実施した。閉じ込め改善モードプラズマの周辺部圧力勾配に起因すると考えられる周辺電流の計測に成功した。実際の測定値を用いたプラズマ周辺部の安定性解析に関しては今後の課題である。電子密度分布はELMy Hモードに形成されるペデスタル構造の形成と崩壊を精度良く観測できた。スペクトル測定によるイオン温度と回転構造の測定にはS/Nが不足し、能動的な荷電交換再結合法による評価は難しかったものの、受動的スペクトル分光法では、プラズマ周辺部のヘリウム線強度からイオン温度と回転を評価することができたが、S/N不足により当初目的であったプラズマ圧力と電流分布の同時測定には至らなかった。これらは、加熱用中性粒子ビームを用いる標準的な電交換再結合法と比べて、今回試みた診断用リチウム中性粒子ビームが、空間分解能の観点からは優れているもののビーム電流が圧倒的(100分の1以下)に小さいことに由来すると考えられるので、今後さらなる引き出し電流の増加が必要であることが示唆された。
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