1、 新規RNAi関連因子の単離と機能解析:分裂酵母では、ヘテロクロマチン構造の形成にRNAi機構が関与することが明らかにされているが、その分子機構の詳細には不明な点が多く残されている。昨年度までに我々は、RNAi因子の変異株に特徴的なサイレンシング異常を指標にしたスクリーニングから、65の変異株の単離に成功した。本年度はこれらの変異株の原因遺伝子の単離を進め、ago1+やdcr1+など既知のRNAi因子に加えて、新規のRNAi関連因子を同定することに成功した。興味深いことに、この新規因子の変異表現型は、H3K9メチル化酵素複合体CLRCの触媒サブユニットをコードするclr4+や、RDRC複合体のサブユニットであるhrr1+の発現によって部分相補されることから、CLRCとRDRCを結ぶ役割を果たす中心的な因子であることが示唆された。 2、 RNAi関連因子の機能解近:昨年度までの研究によって、RNAi機構の中心的因子であるchp1のクロモドメインが、Swi6等の他のヘテロクロマチン関連タンパク質のクロモドメインとは異なり、RNA結合能を有している事を見出した。本年度はChp1の機能にこのRNA結合能がどのように関与しているのか解析を進め、RNA結合能を欠失したChp1が弱いサイレンシング異常を示すこと、またRNA結合能とH3K9meへの結合能の両方を欠失したChp1は、Chp1完全欠損株と同等の表現型を示すことを見出した、以上の結果は、Chp1の機能にはRNAとH3K9meへの結合の両方が必要であり、それぞれの協調的な働きがヘテロクロマチン形成に必須であることを示唆する結果と考えられる。
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