研究概要 |
本研究の主目的は、大腸菌において蛋白質ジスルフィド結合を創生する膜酸化酵素DsbBの作用機序を生化学・構造生物学的アプローチにより分子レベルで完全解明することである。本研究者は2006年にDsbBとそのパートナー蛋白であるDsbAとの複合体の結晶構造解析に成功し(Inaba, et. Al.,Cell,2006)、その構造情報を基に、新たな研究を展開している。 中でも平成19年度は、DsbBが有する膜と水平方向の両親媒性αヘリックスの機能的役割を解明するため、in vivoおよびin vitro両方において系統的な変異解析を行った。その結果、膜水平ヘリックスと膜間の結合が、DsbAからDsbBへの一方向の電子移動反応において重要な役割を担っていることを解明し、DsbBによるDsbA再酸化反応を駆動するためのCysteine Relocaton Modelを提唱するに至った。本研究成果については、すでに論文原稿を仕上げつつあり、近日中に論文投稿する予定である。 さらに、DsbB-DsbA反応中間複合体に加え、DsbB単独での構造情報を得るため、モノクローナル抗体Fabフラグメントを利用したDsbBの結晶化を試みた。DsbBを特異的に認識するモノクローナル抗体の系統的なスクリーニングを終え、FabフラグメントとDsbBとの共結晶化を開始している。すでにDsbBとFabフラグメントとの共結晶が再現性よく得られており、SPring8の放射光を利用した回折実験の結果、4.5Å分解能のデータセットを収集することに成功した。今後サンプル調整条件・結晶化条件を最適化し、更なる分解能の向上を目指すとともに、DsbB単独での構造解析を一日も早く成就させる。
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