本年度は味覚受容体およびTRPチャネル相同タンパク質の結晶構造解明を目指し、結晶化に向けた試料調製条件の確立を行い、結晶化に着手した。まず、両タンパク質についてさまざまな生物種由来の遺伝子を用いて大腸菌、昆虫培養細胞、酵母の発現系用の発現スクリーニングベクターを構築し、遺伝子や発現系の選択および至適化を行った。その結果、味覚受容体およびTRPチャネル相同タンパク質両者とも、機能ドメインを含む部分発現のコンストラクトにおいて、結晶化に適していると思われる遺伝子および発現系を見いだすことができた。次に、TRPチャネル相同タンパク質については、発現タンパク質を試験精製し、N末端分析および質量分析を行って、タンパク質が安定に存在している領域を決定し、その領域の大量発現用ベクターを構築した。そしてそれを用いて結晶化に供しうる量と純度を持つ試料を調製できる大量発現条件および精製条件を確立した。得られた精製試料の性質を調べた結果、この領域は四量体を形成し、二価の陽イオンの存在化で特に安定に存在することを見いだした。さらに精製試料を用いて結晶化条件の探索を行った結果、結晶様の析出が得られるいくつかの条件が見つかった。現在それらの結晶化条件の至適化、および得られた結晶にX線を照射して回折能の評価を行っている。味覚受容体についても、同様に見いだされたコンストラクトについて種々の大量発現用のベクター構築を進めている。
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