本年度は感覚受容体である味覚受容体およびTRPチャネル試料の結晶化条件探索を行った。TRPチャネルについては、平成20年度に発現・精製条件を確立した真菌由来相同タンパク質の細胞内ドメインについて、結晶化条件の探索を行った。その結果、いくつかの条件で初期結晶が得られたため、条件を至適化し、SPring-8ビームラインを利用して得られた結晶のX線回折能の確認を行った。しかし残念ながら、本年度内には構造解析可能なX線回折を示す結晶を見いだすことはできなかったため、引き続き条件探索を進めている。また並行して、チャネル部分を含む受容体全長についても、真核細胞発現系を用いた発現実験に着手した。種々のTRPチャネルおよび相同タンパク質について、メタノール資化性酵母を用いてC端GFP融合タンパク質として発現させる発現系を構築し、発現確認を行った。その結果、いくつかの遺伝子について細胞膜部分での発現が観察され、チャネル全長が発現し適切に膜移行していることを示唆する結果を得た。味覚受容体については、平成20年度に見いだした結晶化に適していると考えられる味認識ドメインコンストラクトについて、昆虫培養細胞を用いたバキュロウィルスによる大量発現系を構築し、発現条件検討を行って発現条件を確立した。また、発現した受容体試料は凝集しやすく分解を受けやすいなど、極めて不安定な性質を示したが、リガンドを添加するなど受容体を安定化させる条件を見いだしその条件下で精製を行った結果、結晶化を行うために十分な純度にまで精製することに成功した。得られた精製試料を用いて結晶化条件の探索に着手した。
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