エピジェネティックな遺伝子発現の制御因子にヒストンの翻訳後修飾がある。ヒストンの翻訳後修飾の機能を理解する上で、その可逆性を知ることは大変重要であるが、メチル化は他の修飾と異なり可逆性が不明であり、最近まで不可逆的で永続的な修飾であると考えられてきた。そこで、研究代表者らは脱メチル化酵素の同定を試み、進化的に保存された新規のヒストン脱メチル化酵素ファミリーとしてJmjcドメイン含有タンパク質ファミリーを同定した。本研究では、可逆性の不明であるヒストンのメチル化部位に対する脱メチル化酵素の同定及びその細胞レベル・個体レベルでの機能解析により、ヒストンのメチル化の機能及び制御機構の解明を目的としている。 当該年度は、可逆性が不明のメチル化部位に対するヒストン脱メチル化酵素の同定の試みを生化学的アプローチにより実施した。 (1)脱メチル化酵素の基質作成:HeLaS3細胞を30リットル培養し、ヌクレオソームを精製した。可逆性が不明のメチル化部位に対するメチル化を触媒するメチル基転移酵素の遺伝子クローニング、タンパク質調整を行った。これらを用いて、基質としてアイソトープラベルされたメチル化ヒストンを作成した。 (2)タンパク質画分の調整(小規模):アフリカツメガエルの卵母細胞のタンパク質画分を小規模(3匹分)で調整した。 (3)脱メチル化酵素活性の検出:反応条件に種々の電子受容体を補酵素として用いて、調整したタンパク質画分中の活性を調べた結果、特定のメチル化部位に対する活性を検出した。 (4)タンパク質画分の調整(大規模):アフリカツメガエルの卵母細胞のタンパク質画分を大規模(150匹分)調整した。当該年度に検出した脱メチル化活性は可逆性が不明のメチル化部位であり、引き続き行うこの活性を有するタンパク質の同定・機能解析は、ヒストンのメチル化の機能及び制御機構の解明において大変重要であると考えられる。
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