小胞体からのCOPII小胞形成過程において、輸送シグナルを持たない非積み荷タンパク質がCOPII小胞から積極的に排除される現象が知られているものの、この現象に関わる因子や分子メカニズムについては明らかとなっていない。そこで、1分子観察用の顕微鏡下に形成させた人工脂質平面膜上に、小胞体におけるCOPII小胞形成反応を再現した実験系において、積み荷タンパク質(Bet1)、および非積み荷タンパク質(Ufe1)をそれぞれ別々の蛍光色素で標識することにより、COPII小胞形成過程における両者のダイナミクスについて解析を行った。COPII因子を添加後、積み荷タンパク質を検出するチャネルで観察したところ、人工脂質平面膜上にGTPおよびCOPII因子依存的に積み荷タンパク質によるクラスターが形成されているのが確認された。このとき、非積み荷タンパク質を検出するチャネルで観察すると、積み荷タンパク質が形成するクラスター領域がバックグラウンドと比べて6~7割程度シグナルが減少していることが確認された。このことから、COPII因子によって形成された積み荷タンパク質のクラスターから、輸送シグナルを持たない非積み荷タンパク質が積極的に排除を受けていることが示唆される。さらに、この非積み荷タンパク質の排除の効率は、GTPの非加水分解アナログであるGMP-PNP存在下では低下することから、Sar1によるGTP加水分解のサイクルによって非積み荷タンパク質の排除が促進されていることが明らかとなった。以上のことから、COPII因子のみでも積み荷タンパク質のCOPII小胞への濃縮と同時に、非積み荷タンパク質のCOPII小胞からの排除が行われていることが示された。
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