研究概要 |
26Sプロテアソームはユビキチン鎖が連結したタンパク質を分解する細胞内プロテアーゼであり、すべての真核生物において生存に必須の役割を果たしている。プロテアソームは酵母からヒトに至るまで高度に保存された構成と分解作用を有するが、哺乳類においては多様性を獲得するとともに特有の生命現象(神経、免疫、癌、老化)に関わっていることが知られるようになり、近年プロテアソームとの関連がクローズアップされ始めている。本研究計画における研究成果は以下の通りである。 1. 胸腺特異的に発現する新規なプロテアソームのサブユニットを発見し、胸腺におけるT細胞の発達に必須の役割を果たしていることを明らかにした(Science, 2007, CurrOpinImmunol2008, TrendsImmunol2008, AdvImmunol2008)。引き続いて、胸腺プロテアソームの作用機構を解明するために、様々なTCRトランスジェニックマウスとの交配を行った結果、胸腺プロテアソームが作り出す特殊なペプチドがMHCクラスIにより提示されることにより正の選択を促していることを解明した(論文投稿中)。 2. 哺乳類においては20Sプロテアソームは構成型プロテアソーム、免疫プロテアソーム、胸腺プロテアソームと多様性を増すが、どのようにして形成されるのかその詳細な機構は不明である。我々はこれまで20Sプロテアソームの形成を促進する特異的シャペロン群を発見してきた。これに引き続き今年度は、そのシャペロン群が新たな機能を持っていること、20Sプロテアソームサブユニットそのものがシャペロン様の働きをすることにより整然と20Sプロテアソームの形成を進行させていることを明らかにした(EMBOJ2008)。さらに、免疫プロテアソーム、胸腺プロテアソームが構成型プロテアソームに対して優先的に形成されるメカニズムも明らかにした(投稿準備中)。
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