独自に開発したショウジョウバエの胚抽出由来のin vitro翻訳抑制系を用いて、small RNAによる翻訳抑制のメカニズムの解析を行った。その結果、ショウジョウバエにおいて、2種のArgonauteサブファミリータンパク質、Ago1、Ago2は、共に標的配列の個数依存的な翻訳抑制能があり、それは標的mRNAの分解を伴わない真の「翻訳抑制」であることが分かった。また、Ago1とAgo2による翻訳抑制様式には大きな違いがあることが明らかとなった。具体的には、Ago1による翻訳抑制は、脱アデニル化を翻訳抑制の主たる要因とするが、poly(A)が存在しない様な標的mRNAに対しても翻訳開始以降の段階における抑制効果を示す。これらは共に、GW182のドミナントネガティブ体によって翻訳抑制が解除されることから、GW182による働きを介するものであることが示された。これに対し、Ago2による翻訳抑制は脱アデニル化は伴わず、翻訳の開始特異的に阻害を行う。この際、GW182のドミナントネガティブ体による翻訳抑制の阻害が観察されないことから、Ago2による翻訳抑制にはGW182は介在しないことが示唆された。さらに、ある特殊な条件下において、Ago2は翻訳抑制ではなく、翻訳の活性化を引き起こすことを、in vitroで再現することに成功した。また、それぞれのAgoと相互作用するタンパク質を、免疫沈降法を用いて解析した。 また、Dicer-1とLoqsの大量発現と精製を行い、基質特異性の検討を行った。その結果、Dicer-1の活性は基質RNAのステム部分の構造によって大きく影響されないことが分かった。
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