「miRNAが実際にどのようなメカニズムで働くのか」ということに対する我々の理解は、驚くほど進んでいない。特に、miRNAが標的遺伝子の翻訳を抑制するしくみに関しては、数多くの報告がなされてきましたが、1. cap構造認識段階での阻害 2. cap構造認識後の後期翻訳開始段階での阻害 3. 翻訳伸長段階での阻害 4. poly(A)の短縮とmRNAの不安定化 5. P-body(mRNAの分解と貯蔵を司る細胞質顆粒)への移行等、様々な仮説が提唱されており、混乱を極めて来た。 本研究では、「small RNA振り分け機構」と試験管内翻訳系を組み合わせることで、初めてAgo1とAgo2による作用を個別に評価し、それらの翻訳抑制の様式を丹念に調べた。 その結果、1. Ago1は標的mRNAのpoly(A)を分解するが、Ago2はしない 2. Ago1は(poly(A)分解と独立して)cap認識後の段階を阻害するが、Ago2はcapを認識するeIF4EとeIF4Gとの相互作用を特異的に阻害する 3. Ago1の働きにはP-body構成要素であるGW182が必要であるが、Ago2には必要ではないという様に、Ago1とAgo2の働きには大きな違いがあるということが明らかになった。よって、これまでの矛盾した結果の少なくとも一部は、別々のAgoタンパク質の活性を混同して評価していたためであると考えられる。
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