miRNAによる標的mRNAの翻訳抑制のメカニズムについては、前年度までに、ショウジョウバエにおいて、Ago1とAgo2によるmiRNAを介した翻訳抑制の様式に大きな違いがあることが明らかになった。miRNAは一般的に、標的mRNAの翻訳を抑制するのが一般的であるが、ある条件においては、標的mRNAの翻訳を活性化する場合があるという報告が数例なされている。我々は、ショウジョウバエの試験管内翻訳系において、標的mRNAにpoly (A)鎖が存在しない場合にのみ、miRNAによる翻訳の上昇が観察されること、また、それはAgo1によっては起こらず、Ago2によってのみ起こるということを見いだした。さらに、このような翻訳活性化は、標的mRNAにm7GpppGキャップ構造が存在しないときに、より顕著に観察された。 以上のことから、miRNAによる翻訳の抑制と活性化のスイッチングと、標的mRNAのpoly (A)鎖あるいはcap構造の有無との間には、相関があることが示唆された。 またショウジョウバエDicer-1によるpre-miRNA様基質の認識機構については、様々な構造をもつ基質RNAを作成し、それらに対するDicing反応の活性と、結合能を詳細に検討した結果、それら二つの間には、強い相関があることが明らかとなった。
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