研究課題
Nem-like kinaseは種を超えて保存されたタンパク質リン酸化酵素である。私たちはこれまでに、NLKが様々な細胞内情報伝達経路の転写因子をリン酸化してその活性を変化させることにより、情報伝達をファインチューンする機能をもつことを明らかにしてきた。本研究において、私たちは「NLKがNotchシグナルの主要構成因子Notchを直接リン酸化することにより"Notchと転写因子CSL及びco-activator CSLとの転写複合体形成"を阻害し、Notchシグナルを抑制すること」を見いだした。Notchシグナルは神経細胞の分化を抑制し、神経前駆細胞(神経幹細胞)を維持する機能をもつ。私たちはさらに、「NLKがNotchシグナルを阻害することにより、神経分化を制御すること」を明らかにした(Nature Cell Biology 2010)。続いて私たちは、神経細胞分化におけるNLKの活性制御機構を解析した。その結果、神経成長因子NGFがNLKの酵素活性を活性化し、また、その局在を細胞質から細胞膜及び核内へと変化させることを見いだした(Journal of Neurochemistry 2009)。また、共同研究により、p38 MAPキナーゼがNLKを直接リン酸化して活性化することも見いだした。加えて、私たちは「躁鬱診病の治療薬として知られているリチウムがNLKに直接作用してその酵素活性を阻害することを発見した(Journal of Neurochemistry 2009)。また一方で、NLKの新たな基質として細胞骨格制御因子であるパキシリンとMAP1Bを見いだした。そして、NGFによって活性化されたNLKがパキシリンとMAP1Bのリン酸化を誘導し、細胞辺縁部へのアクチン繊維の集積を促すことを突き止めた(Journal of Neurochemistry 2009)。このように、本研究により、NLKの新たな分子機能と制御機構が明らかになった。
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http://www.bioreg.kyushu-u.ac.jp/labo/crs/top.html