研究概要 |
脳のような複雑な神経ネットワークを形成する神経細胞は、それぞれ軸索、及び樹状突起といった高度に極性化した構造を有している。よって、神経ネットワークの形成機構を理解するためには、軸索、及び樹状突起、双方の形態形成機構を解明する必要がある。 本研究では、これまで解析が困難であった樹状突起の形態形成機構の解明を目的に研究を行う。まず、樹状突起の形態を生体内で1細胞レベルの解像度で可視化・解析するために、ショウジョウバエの嗅覚系2次神経・Projection Neuron(以下PNと省略)をモデル系とし、遺伝学的モザイク法を用いてスクリーニングを行った。平成19年度は、このスクリーニングによって得られた樹状突起投射変異体、dogi (doubled glomeruli)及び、meigo (medial glomeruli)変異体の原因遺伝子の同定、及び機能解析を行った。 dogi変異体:PNをdogi変異ホモ接合体にすると、PN樹状突起、及び軸索に特徴的な投射異常が現れる。これまで行った遺伝学的マッピングの結果、進化的に保存された新規遺伝子dogi遺伝子が神経投射異常の原因遺伝子であることを明らかになっている。よって、dogi遺伝子、及びその遺伝子産物(Dogi)の機能解析に向けたツールの作成を行った。具体的には、機能的なdogi遺伝子を特定の時期、特定の組織・神経でのみ発現させる目的で(Ga14/UASシステム)、トランスジェニックショウジョウバエ(UAS系統)を樹立した(UAS-dogi-V5, UAS-FLAG-dogiなど)。また、Dogi蛋白質の生化学的解析や、免疫組織化学的解析に向け、抗Dogi抗体を作成し、精製を行った。 meigo変異体:PNをdogi変異ホモ接合体にすると、すべての樹状突起投射が脳の正中線側にシフトするという興味深い表現型を示す。この表現型の原因となる突然変異を同定する目的で、遺伝学的マッピングを行い、樹状突起投射異常の原因遺伝子(meigo遺伝子と命名)の同定に成功した。 以上、平成19年度はdogi変異体、meigo変異体の原因遺伝子の機能解析に向けた準備を確実に進展させることができた。
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