本研究では、これまで解析が困難であった樹状突起の形態形成機構の解明を目的に研究を行う。まず、樹状突起の形態を生体内で1細胞レベルの解像度で可視化・解析するために、ショウジョウバエの嗅覚系2次神経・Projection Neuron(以下PNと省略)をモデル系とし、遺伝学的モザイク法を用いてスクリーニングを行った。平成20年度は、昨年度に引き続き、このスクリーニングによって得られた樹状突起投射変異体、特にdogi(doubled glomeruli)原因遺伝子の遺伝学的、及び生化学的解析の準備を行った。 前年度までの研究により、PNをdogi変異ホモ接合体にすると、PN樹状突起、及び軸索に特徴的な投射異常が現れること、及びdogi変異体の原因遺伝子は進化的に保存された新規の遺伝子であることが明らかになっている。よって今年度は、また、Dogi蛋白質の生化学的解析や、免疫組織化学的解析に向け、抗Dogi抗体を作成し、精製を行った。ヒスチジンタグDogi蛋白質、及びDogiペプチドに対するウサギポリクローナル抗体を作成し、アフィニティー精製することによって生化学的実験に用いることのできる抗Dogi抗体を得ることに成功した。その抗体を用いて内在性のDogiの発現変化を解析したところ、Dogiは胚発生期、及び蛹期に強く発現していることが明らかになった。これらの時期は、神経形態形成が行われる時期でもあり、Dogi蛋白質の予想される機能(神経形態制御機構)を良く反映していると考えられる。更に、Dogi蛋白質の機能ドメインを同定する目的で、様々な長さのDogiを強制発現させるためのUAS-Dogiトランスジェニックショウジョウバエを計8種類作出した。 以上、dogi変異体の原因遺伝子の機能解明に向けた研究を確実に進展させることができた。
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