本研究では、これまで解析が困難であった樹状突起の形態形成機構の解明を目的に研究を行う。まず、樹状突起の形態を生体内で1細胞レベルの解像度で可視化・解析するために、ショウジョウバエの嗅覚系2次神経・Projection Neuron(以下PNと省略)をモデル系とし、遺伝学的モザイク法を用いてスクリーニングを行った。平成21年度は、このスクリーニングによって得られた樹状突起投射変異体、特にdogi(doubled glomeruli)原因遺伝子の遺伝学的、及び生化学的解析の準備を行った。 前年度までの研究により、PNをdogi変異ホモ接合体にすると、PN樹状突起、及び軸索に特徴的な投射里常が現れること、及びdogi変異体の原因遺伝子は進化的に保存された新規の遺伝子であることを明らかにした。また、Dogi蛋白質を特異的に認識する抗体の作成、及び、Dogiを強制発現させるためのUAS-Dogiトランスジェニックショウジョウバエの作出に成功している。今年度は、Dogiの生理機能を明らかにする目的で、Dogi蛋白質と結合する分子をYeast two-hybrid法を用いて探索した。その結果、6つの蛋白質を同定することに成功した。更に、GSTプルダウン法を用いてこれらの蛋白質結合の再確認にも成功した。これら結合候補蛋白質をコードする遺伝子の変異体や過剰発現系統を用いることにより、Dogi蛋白質とこれら結合蛋白質が生体内で複合体を形成し、樹状突起の形態形成に関与する可能性をサポートする遺伝学的相互作用を検出している。以上、神経回路形成を制御する新規dogi遺伝子の機能解析、及びその分子機構を解明する研究を確実に進展させることができた。
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