研究概要 |
本研究は、コシヒカリの遺伝的背景にハバタキの染色体断片を導入したNILを作成する過程で見いだされた、分げつ数、草丈、着粒数などの減少をともなう雑種崩壊について遺伝学的に解明をすることを目的としている。これまで、この雑種崩壊がhbd2およびhbd3の2つの劣勢遺伝子の相互作用によって誘導されることを報告した(Yamamoto et al. 2006. TAG)。 平成20年度はの雑種崩壊の発生機構について分子生物学的な解析を行うため、原因遺伝子であるhbd2およびhbd3のポジショナル・クローニングによる単離、および雑種崩壊の原因となっている生理現象について解析を試みた。Hbd2については、分離集団約13,000個体を用いた結果、候補領域を約17kbにまで特定することができ、この領域内にコードされている遺伝子はCasein Kinase Iのみあった。また、コシヒカリおよびハバタキ間でこの遺伝子配列を比較したところ、Variable domainと呼ばれる領域に1アミノ酸置換が見られたため、この変異が雑種崩壊の原因であると考えられた。Variable domainはCasein Kinase Iが他のタンパク質と相互作用する際に必要であると考えられているため、今回の雑種崩壊は、"本来相互作用するタンパク質同士の不適合"によって引き起こされていると推測された。 Hbd3についても同様に、分離集団約7,000個体を用いてポジショナル・クローニングを行った結果、侯補領域は約170kb(日本晴データベースをもとに)となった。これ以上の組換え個体が得られなかったため、この領域をカバーするハバタキのBACクローン3つについてシーケンスを行った結果、ハバタキにおける候補領域は約130kbであり、日本晴配列との相同性はほとんど見られなかった。両候補領域について遺伝子予測プログラムによる解析を行ったところ、多くの様々な遺伝子が予測されたが、傾向としてNBS-LRRをコードする遺伝子が多く存在していることが明らかとなった。しかしHbd3の原因遺伝子について特定することはできなかった。
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