霊芝の前立腺肥大症抑制効果を、動物実験のみならず、臨床試験でも検証した。霊芝抽出物が、排尿障害改善作用を有することが確認された。さらに、本臨床試験には、食・服用経験の立場から、30%エタノール抽出物を用いた。本30%抽出物に含有される霊芝由来トリテルペノイドを単離・同定し、本化合物の機能解明を行った。その結果、ganoderol Fが男性ホルモン依存的に増殖する前立腺細胞の増殖を抑制することを見出した。前年度の実験データと合わせて、霊芝に含有される、種々の構造を有するトリテルペノイド類が、前立腺肥大症改善効果に関与していることが示唆された。さらに、その作用機構としては、5α-リダクターゼ阻害活性とアンドロゲン受容体結合活性が関与していることが明らかとなった。さらに、トリテルペノイド類には、アンドロゲン受容体を介さずに、細胞の増殖を抑制するものも存在し、多種多様な活性発現機構が推察された。今後、これらの多種多様な薬理活性発現機構を解明するためには、標的タンパク質の同定が必要であり、本標的タンパクの同定こそが、多機能性薬理活性発現機構の解明に繋がると考えられる。霊芝の骨粗鬆症予防改善効果の分子機構を明らかにするために、破骨細胞の分化抑制効果を前年度に引き続き検討した。既に、ganoderic acid DMが、破骨細胞の分化を強力に抑制することを見出していた。そこで、側鎖のカルボキシル基をメチルエステルに変換し、破骨細胞の分化抑制活性を検討したところ、予想に反して、強力な分化抑制効果を示した。興味深いことに、ラノスタン骨格のカルボニル基をアルコールに変換したところ、分化抑制活性は、激減した。このことから、Ganoderic acid DMの構造中のラノスタン骨格を特異的に認識可能な生体分子が存在し、ganoderic acid DMがその分子と特異的に相互作用することによって、破骨細胞の分化を抑制していることが示唆された。Ganoderic acid DMは、前立腺細胞においても増殖を抑制することが示されており、そのラノスタン構造が、細胞の種類に関係なく、選択的になんらかの生体機能に関与するタンパク質と相互作用していることが示唆された。この結果は、ganoderic acid DMをプローブとして、多機能性発現に関する生体分子をつり上げることの可能性を示唆するものであり、未だ、不明な点の多い霊芝の多機能性薬理活性発現機構解明の手がかりとなる重要な知見となるだろう。
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