本研究では、持続的利用が可能であり、大気中の二酸化炭素の固定が可能である木質バイオマスの材料としての利用拡大のために、木材・木質材料の高機能化を可能とする超音波付加含浸・圧密技術の開発を目指す。そして、既存の含浸技術と比較して薬剤含浸量の向上が可能である超音波振動数や振動振幅、雰囲気温度などを変化させた実験的検討を行う。また、超音波振動を付加した圧密化技術に関して、超音波の作用下における木材の変形挙動の変化ならびに木材の乾燥や熱処理によって導入された木材構成分子の不規則な絡み合い(不安定状態)の解消への効果について検討する。この技術開発のために、今年度は以下の研究課題(1)(2)を実施した。 課題(1):超音波振動付加よる木材中への含浸量増加の効果の検討 減圧注入時に超音波振動を付加することによって、若干の含浸量の向上が見られた。ただし、その程度は、樹種に大きく依存した。また、液体温度も含浸量に影響を与えることがわかった。これまでの結果から判断すると、水程度の粘度の液体含浸については、超音波振動の効果は減圧・加圧注入に比較すると微々たるものであった。今後は、液体の粘度を考慮した検討を実施する。 課題(2):超音波振動付加による木材の微細構造変化とそのメカニズムの検討 木材の微細構造変化を温度変調型示差走査熱量分析計により評価した。特に、含浸後に必要となる乾燥工程に着目し、乾燥時間が乾燥木材の動的な熱容量に与える影響を明らかにした。すなわち、動的熱容量は、乾燥時間を長く設定することによって、おおよそ150℃以下の領域では低下していくことが確認された。これは、飽水状態からの乾燥によって蓄えられたひずみや応力が、乾燥後に徐々に解消され、分子配列・構造のパッキングによって微細構造の緊密化が生じたと考えられた。
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