研究概要 |
水産資源を支える餌生物として,また,水環境の状態をあらわす重要な指標として,顕微鏡観察による長期的なプランクトンのモニタリングがなされてきた。しかし,プランクトン種の中には,生活史におけるステージ,生理条件,雌雄の違いによって形態が大きく変化する種や,或いは,まったく別の分類群に属する酷似種が同水塊中に生息するため,これまでのモニタリングで一般的に用いられてきた光学顕微鏡観察では,十分な経験を有する技術者でも同一種がどうかの識別すら困難である場合や,種レベルでの同定が不可能な場合も多く,分類精度が一定しないという問題は,未だ解決されていない。近年,DNAのデータベース化によって細菌から高等植物まで遺伝情報に基づく分類識別が飛躍的に発展しており,分子分類に基づくモニタリングの実用化が期待されている。 そこで,本研究では,プランクトンのモニタリングデータが豊富に蓄積されてきた湖の1っである琵琶湖をケーススタディーとして,湖沼のプランクトン遺伝子情報に基づく,迅速かつ正確で客観的な分類ならびに定量化手法を開発し,モニタリングに適用することを目的とする。初年度である平成19年度は,琵琶湖で生息するプランクトンの遺伝子情報を収集する必要があった。そこで,植物プランクトンを単離培養し,真核生物は18S,原核生物は16SrRNA遺伝子をPCRで増幅させ,クローニングを経てシーケンスを行った。琵琶湖の湖水から合計169株の植物プランクトン(緑藻類,珪藻類,藍藻類)の単離培養を行った。
|