水産資源の餌生物として、また、水環境をあらわす指標としてプランクトンのモニタリングは有効であると考えられ、海洋・湖沼において長年継続的に行われてきた。近畿地方1400万人の水道水源を管理する滋賀県においても1977年に淡水赤潮が初めて発生したことをきっかけに、モニタリングを月1~2回、北湖および南湖で行ってきた。しかし、プランクトン種の中には、生活史におけるステージ、生理条件、雌雄の違いによって形態が大きく変化する種や、或いは、まったく別の分類群に属する酷似種が同水塊中に生息するため、これまでのモニタリングで一般的に用いられてきた光学顕微鏡観察では、十分な経験を有する技術者でも同一種かどうかの識別すら困難である場合や、種レベルでの同定が不可能な場合も多く、分析精度が一定しないという問題は未だ解決されてない。 そこで、本研究では、琵琶湖をケーススタディーとして湖沼のプランクトンの遺伝子情報に基づく迅速かつ正確で客観的な分類ならびに定量化手法を開発し、モニタリングに適用することを目的としている。平成19年~平成21年度までの研究において、既存のデータベースから琵琶湖で主に優占する植物プランクトンを検出する手法が開発できたので、平成22年度は、PCR-DGGE(変性剤濃度勾配ゲル電気泳動)を用いて、これまで顕微鏡観察で検出されてこなかったプランクトン種について経月モニタリングを行った。すると、琵琶湖でこれまでに報告されていないピコシアノバクテリアが検出され、分子分類の重要性が示された。さらにPCR-DGGE法を琵琶湖の植物プランクトンおよびバクテリアに適用し、季節変化、場所による組成の違いが見られ、技術者の検鏡能力に依存しない手法でモニタリングすることに成功した。
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