研究課題
セルロースは、植物細胞壁成分中の約50%を占める多糖であり、天然で最も豊富に存在する有機物である。昨今のCO_2削減や原油高といった社会的背景を受けて、セルロース系バイオマスの高度利用が望まれている。セルロースは、重合度が10^3-10^4程度のグルコースのホモポリマーであるが、その溶解性はきわめて低く、重合度が7以上になるとほとんど水に溶解しなくなることが知られている。したがって、セルロース加水分解酵素(セルラーゼ)によってセルロースが加水分解されて可溶化する反応は、固液界面で進行する反応であると言える。本研究では、糖酸化酵素による活性検出法の感度の高さを利用し、さらにこれらの酵素に酸化還元電極を組み合わせることで、これまでの光学的手法では活性検出が不可能であった固体基質に対する酵素活性を、リアルタイムにモニタリングする手法を開発することを目的としている。本年度は、昨年度の実験結果を受けてメタノール資化性酵母Pichia pastorisによって生産された組み換えセロビオース脱水素酵素を用いて、メディエーターを介さない直説法によるセルラーゼ活性の測定を試みた。すなわち、組み換えセロビオース脱水素酵素を炭素微粒子とともに炭素電極表面に固定化し、電極とセロビオース脱水素酵素が直接電子をやりとりすることを確認し、さらにセロビオースを基質としたときに触媒電流が観察されることを調べた。また、セロビオースの代わりに非晶性セルロース(リン酸膨潤セルロース)および結晶性セルロース(アビセル)とTrichoderma菌由来セルラーゼ製剤より精製して得られたセロビオヒドロラーゼIを添加し、本酵素が各セルロースを分解する際に生成されるセロビオースを、セロビオース脱水素酵素を固定化した電極によって直接測定する事に成功した。また、高速原子間力顕微鏡を用いたセルラーゼのリアルタイム観察にも成功した。
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