研究概要 |
受容体と共役する三量体G蛋白質は、様々なホルモンや神経伝達物質によって誘導される細胞応答を仲介している。三量体G蛋白質は、その機能の違いから大きく4つのファミリー(Gs, Gi, Gq, G12)に分類されるが、心臓におけるG12ファミリー蛋白質の役割についてはよく分かっていなかった。申請者は、G12ファミリー蛋白質(GI2とGl3)のαサブユニットの機能を特異的に阻害するペプチドを心筋細胞特異的に発現させたトランスジェニック(pl15-RGS-Tg)マウスを作成した。pl15-RGS-Tgマウスの横行大動脈を狭窄し、6週間の圧負荷を行ったところ、圧負荷による心重量の増大(心肥大)は野生型と同程度に誘導されたのに対し、心筋細胞周囲の間質の線維化 (コラーゲンの蓄積) とそれに伴った拡張機能の低下が有意に改善されていた。さらに、メカニカルストレスによって活性化されるG_<12/13>蛋白質共役型のトリガー受容体が、プリン作動性のP2Y_6受容体であることを初めて明らかにした。一方、申請者は、Gq蛋白質の活性化によるジアシルグリセロール感受性Ca^<2+>チャネル(TRPC3/TRPC6)がアンジオテンシンII刺激によって誘発される心肥大に関与することを明らかにしてきた。TRPC3チャネル選択的阻害剤を圧負荷モデルマウスに持続投与したところ、圧負荷によって誘発される心肥大とそれに伴う心収縮機能の低下が有意に抑制された。以上の結果から、Gq蛋白質-TRPCチャネル-Ca^<2+>シグナリングが圧負荷による心肥大誘導に、P2Y_6受容体-G_<12/13>蛋白質が圧負荷による線維化誘導に関わることを個体レベルで初めて明らかにした。
|