2年目までに、樹状細胞指向性と超音波応答性を併せ持つ新規DDSキャリアの開発を行い、免疫担当細胞指向性を示すマンノース修飾バブルリポソーム/pDNA複合体(Man-PEG-BL)を用いた超音波照射による高効率な細胞選択的遺伝子導入法の構築に成功した。そこで3年目となる本年度は、Man-PEG-BLを用いた遺伝子導入機構の解明に関する研究を行った。放射標識pDNAを用いた体内動態解析を行った結果、マウスへ静脈内投与後、Man-PEG-BLは、未修飾バブルリポプレックス(PEG-BL)に比べ、肝臓や脾臓に高い集積を示し、両製剤ともに超音波照射により肝臓や脾臓への取り込みが僅かながら増大されることが明らかとなった。また蛍光標識pDNAを用い、共焦点レーザー顕微鏡によるマウス腹腔マクロファージ初代培養細胞への取り込み過程の観察を詳細に行った結果、Man-PEG-BLはPEG-BLより有意に高い細胞取り込みを示し、両製剤ともに超音波照射により細胞質内へpDNAが高効率に移行されることを確認した。また、初代培養マクロファージにおけるMan-PEG-BLやPEG-BLと超音波照射による遺伝子発現は、エンドサイトーシス阻害剤ならびにTLR9シグナル阻害剤の影響を受けず、この条件下、炎症性サイトカインTNFα産生も僅かであった。以上、Man-PEG-BLやPEG-BLと超音波照射による遺伝子導入法では、pDNAをエンドサイトーシス経路ではなく、細胞穿孔により直接細胞質内へ導入していることを強く示唆している。さらに、超音波照射に伴い、転写因子AP-1やNFκBの活性化が引き起こされ、超音波応答性マンノース修飾バブルリポプレックスによる高い遺伝子発現に一部寄与していることが示唆された。これらの知見は、超音波応答性リガンド修飾バブルリポソームの開発において有益な基礎的知見となると考えられる。
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