研究概要 |
(A)交感神経と性ホルモン非ゲノム経路のクロストークの検討:モルモット心室筋細胞において,性ホルモン急性作用(非ゲノム経路)を介したNO産生により,basal状態ではI_<Ks>、チャネル増大,cAMP刺激状態ではL型Ca^<2+>チャネル抑制が見られることをパッチクランプ法により示されCirculationに発表した.このcAMPとcGMPシグナルのクロストークにおいて,ホスホジエステラーゼの関与を示唆するデータを得た. (B)性ホルモンと薬物のクロストークの検討:エストロゲンによるHERG抑制作用には,HERG薬物結合部位のうちF656の側鎖の芳香族が重要であることを示した.エストロゲンはHERGブロッカーであるE4031の感受性を増大することを見出し,JPhysiologyに発表をした.HERGブロッカーの結合にはF656の疎水性が重要であることと,エストロゲンはゲーティングに作用することから,アロステリックな相互作用が示唆される.臨床で報告されているエストロゲンによる薬物誘発性致死性不整脈の増悪作用の新たな分子メカニズムになることが期待される. (C)統合的心臓シミュレーションモデル構築への準備:プロゲステロンの作用を導入したキデルをもとに、非ゲノム作用による抗不整脈作用を検討した.不整脈のモデルとして,交感神経優位時のLQT5症候群(頻拍,I_<Ks>ブロック&cAMP不応答),副交感神経優位時のLQT2症候群(徐脈,HERGブロック)を採用した.プロゲステロンは,どちらのモデルに対しても保護的に作用することが,単一細胞,多細胞モデルのどちらにおいても示された.性周期における血漿プロゲステロンレベルの変動の範囲内での活動電位の変動が実験結果と定量的に一致し,不整脈の保護効果に差が見られたことから,プロゲステロンによる非ゲノム作用が性周期による不整脈リスクの変動に大きく寄与している可能性が示唆された.
|