本年度は、RestコンディショナルノックアウトES細胞およびマウスを作製し、その表現型を解析した。特に2008年のNatureに報告された、RestがES細胞未分化性維持に必須であるという報告に着目し、RestのES細胞未分化性維持における役割について実験を行った。RestコンディショナルノックアウトES細胞にcre recombinaseを一過性に発現させることにより、Rest-/-ES細胞を樹立することができた。この事実は、RestがES細胞の未分化性維持に必須でないことを示唆し、Natureの報告と比較すると興味深い。我々は、さらに、ドキシサイクリンによりcre recombinaseを誘導可能なRestコンディショナルノックアウトES細胞を樹立することに成功した。このES細胞を利用すれば、Rest遺伝子のノックアウト直後における遺伝子発現変化、細胞の性質変化を観察することが可能であり、今後、Restノックアウト後のadaptationの否定が可であると考えられる。 Restコンディショナルノックアウトマウスは、主にRestのがん抑制遺伝子としての役割を明らかにする目的で解析を行った。家族性大腸腺腫症のモデルマウスであるApc Minマウスと交配し、Restノックアウトによる大腸発がん過程への影響を検討している。Rest遺伝子座はヒト大腸がんで頻繁に欠失していることが報告され、腫瘍形成に対しての促進作用が期待される。
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