研究概要 |
1)腎薬物トランスポータの発現機構の解明 有機カチオントランスポータ(OCT2)、有機アニオントランスポータ(OAT1)、H+/有機カチオンアンチポータ(MATE1)のプロモーター解析を行い、それぞれの転写制御機構を明らかにした。以下に同定したトランス因子(シスエレメント)を示す。OCT2:USF1(E-box)、OAT1:HNF4α(DR-2, IR-8)、MATE1:Sp1(GC-box)。またヒトMATE1のGC-boxに、その転写活性を低下させる一塩基多型(-32G>A)が存在することを同定した。さらにヒトOCT2が腎臓特異的に発現している点にepigeneticな観点から検討を加え、E-boxのCpG配列が腎臓では低メチル化状態であり、転写因子が結合し機能していることが、一部関与していることを明らかにした。 2)病態モデル動物を用いた薬物トランスポータの発現解析 胆汁うっ滞のモデル動物であるEHBRを用いて、小腸並びに腎薬物トランスポータの発現変動を調べた。その結果、腎臓の近位尿細管上皮細胞の側底膜に発現するOAT3の発現が上昇することを見出した。OAT3はタンパクレベルでのみ、発現上昇が認められた。EHBRでは、血中に加えて尿中でも胆汁酸が上昇しており、OAT3は胆汁酸の尿細管分泌を媒介している可能性が示唆された。そこで、ヒト並びにラットのOAT1とOAT3発現細胞を用いて、胆汁酸の輸送実験を試みたところ、OAT3のみ胆汁酸を輸送した。さらに、EHBRでは、OAT3の典型的基質であるセフォチアムの腎排泄が遅延することが判明した。
|