研究課題
平成20年度までに行った研究において、内臓脂肪体積と大腸腺腫との間に正の関連がみられ、内臓脂肪蓄積が大腸発がんにおいて重要な役割を果たしている事が示唆された。平成21年度は、内臓脂肪体積と大腸腺腫との間にみられた関連のメカニズムを検討するため、バイオマーカーを用いた研究を行った。初めに、内臓脂肪蓄積はインスリン抵抗性と関連している事が知られているため、インスリン関連マーカーと大腸腺腫との関連を検討した。男性において、膵臓からのインスリン分泌の指標であるCペプチドと大腸腺腫との間に正の関連が見られた(傾向性p<0.001)。また、生体内でインスリン様成長因子の調整を行っている結合因子1との間に負の関連が見られた(傾向性p=0.001)。一方、女性においては、男性で見られたような関連は見られなかった。これまでの研究においても、肥満が大腸発がんに与える影響には男女差が見られているため、今回の結果はこの知見を支持するものであると考える。次に、脂肪細胞から産生される生理活性物質であるアディポネクチンおよびレプチンに注目し、大腸腺腫との関連を検討した。血漿アディポネクチン濃度は大腸腺腫と負に関連しており(傾向性p<0.001)、血漿レプチン濃度は大腸腺腫と正に関連していた(傾向性p<0.001)。アディポネクチンおよびレプチンと大腸腺腫との関連は、インスリン抵抗性の指標で調整すると弱まったが、傾向は変わらなかった。興味深い事に、アディポネクチンとレプチンとの間には交互作用が見られた(交互作用p=0.007)。今回の結果は、アディポネクチンとレプチンが大腸発がんにおいて密接に関連している事を示唆するものであると考える。平成21年度に行った研究から、内臓肥満が大腸発がんに及ぼす影響は、複数のメカニズムを介している可能性が示唆された。
すべて 2009 その他
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Am J Epidemiol 170
ページ: 1502-1511
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http://epi.ncc.go.jp/jp/mstudy/colon/