研究概要 |
1.アディポネクチンの心筋梗塞後の心リモデリングにおける役割検討:野生型(WT)マウス、アディポネクチン遺伝子欠損(APN-KO)マウスに心筋梗塞モデルを作成した。APN-KOマウスでは、術後28日目の左室腔が著明に拡大、左室駆出率の低下や左室拡張末期圧の上昇といった心機能低下、虚血領域における血管新生の低下を認めた。反対に、アデノウイルスを用いて、アディポネクチン濃度を上昇させることにより心筋梗塞モデル作製後の心機能が改善した。(J MoI Cell Cardiol,2007)。 2.血管内皮前駆細胞(EPC)の動員や機能に対するアディポネクチンの役割検討:APN-KOマウスとWTマウスに下肢虚血モデルを作成した。APN-KOマウスでは、WTマウスに比較し、血流回復能が悪く、モデル作成後7日目のEPCの骨髄からの動員が低下していた。アデノウイルスを用いて、アディポネクチン濃度を増加させたところ、EPCの骨髄からの動員は増加した。ヒト末梢血を利用した培養実験系ではアディポネクチン蛋白がEPCコロニー形成を促進し、管腔形成能や遊走能を増強させた(現在投稿中)。 3.ヒト心筋梗塞患者におけるアディポネクチン濃度、EPC動員と心リモデリングとの関連検討:心筋梗塞患者においては、アディポネクチン濃度とEPCのマーカーである、CD34陽性細胞の数とが、有為な相関関係を持つことが示され、アディポネクチン濃度が高値な患者で、心筋梗塞発症6カ月後の梗塞サイズが小さく、心機能が良いことが明らかになった (Am J Cardiol,in press)。 これら1-3の結果から、アディポネクチンは心血管リモデリングに予防的に働き、その機序として、血管新生促進作用が関与している事が考えられた。アディポネクチンによる血管新生促進作用には、EPCの動員や機能亢進が関与している可能性が示唆された。
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