研究概要 |
1、Cardio-Facio-Cutaneous(CFC)症候群および類縁疾患の遺伝子解析 CFC症候群および臨床的に類似した表現型をもつ症候群であるヌーナン症候群、コステロ症候群患者またはこれら3症候群が疑われる患者検体を新たに36人収集した。これらの新たな検体およびこれまでに集まっていた患者検体について、BRAF, KRAS, MEK1, MEK2, PTPN11, HARS、および最近ヌーナン症候群の原因遺伝子として判明したSOS1, CRAF遺伝子解析を行った。これらの遺伝子解析は、遺伝子変異と臨床症状の関連を明らかにするため重要である。さらに、変異の同定されなかった検体については候補遺伝子の解析を進めている。 2、KRAS・BRAF遺伝子変異の新たな下流分子の同定 NIH3T3細胞におけるELK転写因子の活性化(ルシフェラーゼアッセイ)を検出することによってKRASとBRAFの変異がRAS/ERKを活性化するか否かを調べたところ、KRASのD153V変異では無刺激時にELKの活性化が見られたが、G60R変異では活性化がみられなかった。BRAFの変異では、半数の変異でERKあるいはELK転写因子の活性化がみられたが、半数の変異では活性化を示さなかった。 そこで、これらの遺伝子変異の影響がERK/ELK以外の伝達経路にあるのか否かを検証するために、BRAF WT, V600E(癌で同定),CFC症候群で同定された遺伝子変異でERKを活性化する変異であるK499EとERKを活性化しない変異E501GをNIH3T3細胞に導入し、R&D社のProteome Profiler Arraysにおいて複数のキナーゼの活性化を検討した。その結果、ERK以外のキナーゼ(JNKやP38)でも活性の上昇が観察された。現在これらのキナーゼの下流の転写因子について活性化の有無を検討中である。
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